荒井和弘 会長
北海道ファシリティマネジメント協会(HFMA、199社)の第5代目会長に就任。初の東京在住の会長だが、これまでも日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)と、HFMAとの橋渡しを担ってきており、道内での講演もこなし、北海道との縁も深い。これからのファシリティマネジメント(FM)と、北海道での取り組みについて展望を聞いた。
ー資格制度とJFMAとの連携強化について
全国ではいま、ファシリティマネジャーは1万4千人。国家資格者は最低でも3万人は必要とも言われ、現状ではまったく足りない。国家資格ということは、業務の独占を認めることにもなるため、仕事をするうえで資格者が不足しているというのは問題だ。
もともと資格者制度をスタートさせるときには国家資格を予定していたが、いろんな経緯もあり実現できなかった。
国家資格を目指すためには、JFMAの動きは大きな課題。HFMAとしても働きかけをしていくことも重要だ。
役所のトップに理解してもらう必要がある。そのことについてHFMAはこれまで熱心に取り組んできていると認識しているが、JFMAにもお願いしてさらに、北海道内での理解を協力してもらえるよう考えている。
ファシリティマネジャーは、もともと個人の資格。企業利益のためにマネジャーの資格を取らせるのではなく、結果の話だ。マネジャーがいたから企業の利益につながったという形でなければJFMAとの連携は難しい。
マネジャーが増え、企業が動く、ボトムアップでFMのスキルを活かす社会を構築していくのが望ましい。
アメリカなどは確実にそうだ。年月をかけ、経営手法の一つとなり、経営層の人たちがファシリティマネジャーになっている。予算を持っていたり、事業執行権を持っている。
日本は残念ながらそのような形ではない。どこかでサクセスストーリーを作らなければならない。
ーHFMAでは新たにまちづくり委員会をスタートさせたが。
まちづくりでも良い事例が出てきているが、なかなか全国展開にはならない。どこかで、自分のところは違う、といった感覚がある。FMは範囲が広く、どこかでやってからといって、みんな同じにはならないが、基本的には最小限の投資で最大のリターンを生むのがマネジャーの職能だ。
そのことを経営層が理解するのが重要だが、現実は、違う。アメリカみたいに副社長がFMの全権を持っている組織だと横串をさせるが、日本はいまだに縦割りだ。
もう一つの課題は、役所の単年度予算性。これがFMに馴染まない。
長期間のトータル投資が最小限になるためにどうするか。それを考えるのがFMだが、その発想にはならない。そのためには地方自治体では議会が重要だ。
その点、北海道はいい事例になると思う。議会で承認して取り組んでいけるなど可能性は大きい。
少子高齢化と税収の減少で、いままでと同じような行政サービスの提供はできない。箱物も景気浮揚対策にならないし必要もない。では集約化かとなるが、総論賛成各論反対になってしまう。皆がハッピーになることは難しく、どう不利益を軽減するかを考えなければならない。
道内では、議員や自治体職員でファシリティマネジャーの資格者がいると聞いている。
サクセスストーリーを作る。一人、二人じゃできないから、ネットワークを作り、HFMAがサポートする。そういう取り組みが今後、大切になっていくと思う。
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荒井和弘(あらい かずひろ)1944年生まれ。68年東京農工大工学部電気工学学科卒、大成建設に入社。営業総合本部FM推進室長、設備本部本部長(理事)などを歴任、2007年退社。東京不動産代表取締役常務技術本部長など経て、現在、顧問。建築設備技術者協会監事。JFMAでは企画運営委員長などを務めた。2018年6月、HFMA第6回総会で会長に就任。