官民連携で新たなスタイル〜増えるサウンディング
官民連携で新たなスタイル〜増えるサウンディング
道内も先月に3件
PFI・PPP事業など官民連携に取り組む全国の自治体で「サウンディング型市場調査」を実施するケースが急増している。事業構想の発案から事業化の段階において、民間企業の投資意向を「対話」を通じてヒアリングし、自治体だけでは難しい、斬新で自由なアイディアを盛り込む。日本PFI・PPP協会(植田和男理事長)のまとめでは、17年度は前年度に比べ2・2倍の186件が行われ、18年度に入ってからも6月末までに同1・5倍の38件と増えた。道内では昨年から事例が報告され、累計で9件に留まっているが、このうち3件はことし6月に実施されている。さらに、これまでの市町村独自の取り組みに加え、国がサウンディング調査代行に乗り出しており、動きは加速している。
サウンディング調査実施件数:4・半期ベース
(日本PFI・PPP協会まとめから作成)
この民間投資意向調査は、民間事業者との意見交換を行い、市場性や実現可能性などを把握するもの。具体的には事業メニューのアイデア収集をはじめ、行政だけでは気づきにくい課題や民間事業者の参入意欲、公募条件などを把握していく。
もともとは、横浜市や神戸市らが先駆けとされ、大規模な自治体のみで実施される特殊な位置づけだった。しかしこの数年で状況が一変。中小規模の自治体が、サウンディングという民へのアプローチを開始した。
取り組むメニューは、小学校の統廃合に伴うイノベーション、庁舎整備、道路や公園、駐車場など多種多様、規模も様々だ。
自治体のサウンディング調査状況を取りまとめている日本PFI・PPP協会の植田和男理事長は、急増する背景に、2つの理由を挙げる。
1つは、自治体の財政危機に対して、国からのPFI・PPPなど民活促進要請があったこと。もう1つは、少子高齢化に伴う小学校の廃校問題への自治体の対応だ。
国は、15年に「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」を定め、翌16年には新たに10年間で21兆円規模の事業推進を目標にした「PPP/PFI推進アクションプラン」を決定。各省庁と人口20万人以上の地方公共団体で、優先的検討指針規定を16年度末までに策定100%することを要請した。
その結果、ことし3月末段階で対象181団体に対して99・4%が実施。20万人未満の1607市町村において19・3%が策定している。
1960年代後半以降に整備されたインフラの更新時期のピークがこの20年間のうちにやってくる。この状況は認識していた事実だが、国の「要請」が大きな後押しになった。
少子高齢化は様々な課題に直面しているが、特に小学校の廃校問題は顕著だ。更地か、既存施設の再利用か、役所だけでは、その答は出せず、民に頼るしかない状況だ。
小学校の扱いが起爆剤となり、それに公園など従来の官民連携ではなかった分野にも広まってきた。
もともとは基本構想があり、その上で手法を整備するというプロセスだった。それが基本構想を立てる段階から民からアイディアを聞いてもいいのだという考えが地方に一気に広まった。公共事業の枠組みが変化してきている。新たなうねりだ。
公共政策が新しい局面に入ったと、植田理事長は指摘する。民の力がなければ、公共FM(ファシリティマネジメント)において、コスト縮減にも新たな収入増にもつながらならない。
もはや「公共マネジメントは、民が介在しなければ、成立しなくなった」という。
道内自治体のこれまでの動きは、北海道の赤レンガ庁舎の保存調査、耐震改修について実施したほか、江別市の市営駐車場の跡地利用や旧江別小跡地活用、小樽市の旧祝津小学校の利活用、札幌市の石山南小跡地活用、公園屋外トイレの広報・仕様書、中島公園ほか3公園の活用、苫小牧市の仮称・市民ホール整備がある。
また国交省が17年7月から9月まで、道内7空港特定運営事業に関係するマーケットサウンディングを実施。その結果、一括した運営委託を2020年に開始することをことし4月に発表している。
サウンディングの実施は、今後もさらに増加するだろう。
市町村に変わって国交省がサウンディング業務代行に乗り出したからだ。昨年は道外4地区だけに留まっていたが、ことしは9地区に拡大。札幌でも9月26日に実施する。案件の募集は、国交省が全国の都道府県を通じ市町村に対し既に開始、今月末まで受け付ける。
0 件のコメント:
コメントを投稿
登録 コメントの投稿 [Atom]
<< ホーム