病院・老健施設は外断熱で健康に
病院・老健施設は外断熱で健康に
実現の鍵は、どこに?
「病院・老健施設の外断熱を考える」をテーマにしたセミナーが先月(7月)、札幌市内で開らかれた。日本外断熱協会(堀内正純理事長)の主催。理事でイーサイ代表の岡崎俊春氏が、福知山市にある京都ルネス病院の事例を報告。適切な外断熱建物が、高性能な省エネルギーを図るZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を実現させ、入院、入居者だけでなく、施設で働く職員たちにも快適な環境を提供できると訴えた。参加者たちは、病院・老健施設における外断熱工法の普及を図るため、連携を図っていくことを確認した。
京都ルネス病院(冨士原正人医院長)は2016年9月に、老朽化と耐震対策のため移転新築した。
高気密高断熱の外断熱工法と湿式調湿機を採用。照明もLEDで省エネルギーを図り冷暖房負荷の低減も図った。さらにBCP対策としてコ・ジェネレーションシステムを設置。2014年度の住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入惻隠事業でZEB事業の認定で3億円の補助金も得た。
また病棟を診療科別ではなく重症度別に配置。患者本位の医療体制に。病床も20床減らし173床に。随所に木製サッシをはじめ、北欧家具を取り入れ、いやし空間デザインによるアメニティの質的向上を狙ったという、まさにヘルスケアFMを実践している。
このセミナーで思い出すのは、旧・夕張医療センター改修プロジェクトだ。
財政破綻した夕張の市立病院が公設民営診療所として再スタートした際、診療棟の集約化を図り、3階建ての施設だったものを1階のみを使用、ほかを閉鎖。メーカーらの協力で高断熱複層ガラスと樹脂サッシが贈呈され、従来、7千万円かかっていた光熱水費中心の年間維持費が5千万円まで圧縮できた。
プロジェクトでは、室工大の鎌田紀彦教授(当時)と北大工学部の羽山広文准教授(当時)が断熱シミュレーションを実施。2009年3月にその報告会が行われ、窓などの開口部中心の高断熱化で年間四百万相当の重油削減が見込まれ、投資にかかる4千万円も10年で回収できること、また天井への吹付け断熱の代替案として、閉鎖部分の2階床に断熱材を敷き詰め、窓の高断熱化と合わせると年間380万円の暖房費の削減になることなどが明らかになっていた。
当時、医療センター長を務めていた故・村上智彦理事長は「医師をいくら増やしても脳卒中は無くならない」と、住環境の高断熱化の必要性を指摘。わずかな投資で改善できる住環境の断熱改修整備を公共事業で取り組むよう、訴えていた。
今回の「病院・老健施設の外断熱を考える」セミナーでも、適切な外断熱によって、過剰な設備投資も少なくなり、暖冷房に費やすエネルギーコストも抑えることができるほか、入院、入居者だけでなく、施設で働く職員たちにも快適な居住空間環境を提供できるとの意見があった。
北海道から高断熱高気密の住宅やビルの普及が叫ばれるようになってすでに30年以上は経過しているが、けっして十分に浸透しているとは言えない。
それにはさまざまな要因がある。
高性能な設備機器の導入による省エネルギーを促進させたい考えと、外断熱工法のように住宅やビルの構造システム全体で高断熱化で実現させようとする考えが場合によっては相対してしまうケースがあるからだ。
しかし、関係省庁間の主導権争いに巻き込まれてはいけない。今回のセミナーにおいても国交省、経産省、厚労省が関連し、名目だけでなく実質的な連携がいかに重要かはまさに関係者は実感していることだろう。
*ZEB=年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物。住宅の場合はZEHと呼ばれる。
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