見えてくる介護職のフリーランス化
見えてくる介護職のフリーランス化
「連載 いま、介護施設は〜ケアマネジャーMさん体験談 第1部グループホーム(下)」
■リーダー裁量の業務方針
2日目は前日とは別のフロアに。
そこも日勤者2人体制だったが、彼らの挨拶で何かフロアが全体的に明るく感じたという。
仕事はトイレ掃除からスタート。そしてフロアや利用者の部屋へと移るが、ここでは利用者の方も参加する。一緒に掃除をしたり、昼食作りの手伝いをしたり。
フロアリーダーに尋ねると、各フロアの裁量でやり方が違うらしい。そこのフロアは出来ることは利用者にも手伝ってもらう考えだった。
日中でも食堂にはほとんどの利用者がいて、部屋に籠っている人はいないようだった。
「テレビを見たり、新聞を読んだり。パズルや笑顔で世間話をしてたりと、みんながそれぞれ、楽しそうなんですよ。同じ施設なのにフロアによってやり方が違ってた。僕は、2日目のフロアの方が好きだなぁ。利用者の方と一緒に冷たい麦茶をいただいたりね」
午後からの入浴介助は、前日と同じ3名入浴。やはり全て丸投げ状態だった。違うのはバイタル測定や着替えの準備、浴室との送り迎えは職員がやってくれたことだった。
ただ、リーダーから「入浴するうちの一人は、昨日入所したばかりで、ここでのお風呂は初めてなんです。大丈夫ですか?」と聞かれ、そう言われてもなぁと思ったという。
■スポット人員は織り込み済み
入浴者の洗濯と浴室の掃除を終え、ひと段落。ジュースと果物の差し入れ。職員たちと小休止に。この時に、リーダーにいろいろと話を聞いたという。
介護員不足が深刻で、本来なら日勤者は最低でも3人が必要だが、いまは常勤が2人しか置けない状況。
夜勤のシフトなども考えると、土日は1人の時もある。
そのため、利用者とレクをしたくてもできない。人員不足から後回しにしてしまう仕事も多くあって、その部分を、今回のようなスポットの派遣に頼っている。
リーダーは「多くのグループホームは同じような状況だと思いますよ。募集はしているようだけど」と話していたそうだ。
Mさんは指摘する。
「スポットの派遣がいなければ、利用者3人に対して介護職員1人という規定人員の確保も厳しい。以前、札幌市内のグループホームで夜間の火災事故で、多くの利用者が犠牲になり夜勤人員体制の見直しが叫ばれていたが、それどころではない」と。
休憩を終え、利用者の方と一緒に洗濯物を干す。そして離床介助、トイレ誘導などを行い、最後に夕食の盛り付け補助を終えて、2日間のグループホームでの仕事が終わった。
「施設見学会とは全く違う部分を体験できた。もちろんこれがすべてではないだろうが、各介護現場における深刻な人員不足の現状も改めて認識しました」とMさんは振り返る。
一方で、スポット派遣や介護員のフリーランス化などが人員不足解消に繋がる可能性があるとも。
「レクリエーションや外出支援ができなかったのは残念。それにしても数カ月振りの入浴介助は全身汗だくでバテバテでした。帰って来てからのビールは旨かったです」
■業務の標準化は進んでいるのか
一般社団法人北海道認知症グループホーム協会がまとめた、2016年度事業所基礎調査集計結果によると、介護職員のうち、正規職員は57.2%、非正規は42.8%という割合だった。
Mさんの体験談を聞いて関心を持ったのが、フロアによって雰囲気が違う印象だったという点。その要因が、フロアリーダーの裁量による業務内容の違いということだ。
このグループホームでは、各フロアリーダーの裁量によって、業務方針が変わる。あるフロアでは利用者も一緒に作業することで一体感が生まれ、明るい雰囲気を醸し出している。またそうではないところもある。
リーダーの資質によってその組織の生産性や活動能力、雰囲気は変わる。だからこそ、組織のマネジメントとしては、各部署のベンチマークなどを使い業務内容を標準化、より効率的な経営を目指すことになる。
しかし、組織は人だ。
標準化された上にリーダーの資質がプラスαされるならば、さらに効率化に期待がかかる。当然、プラスαの資質は、適正に評価されるべきであり、それがまた組織全体の生産性の向上につながっていく。
こうした介護施設でも同様だろう。ただ、特殊なのは、要介護度によって標準化の内容が変わらざるを得ないことだ。そこが、この施設運営の難しい点なのだろう。
今回、Mさんは、スポット職員が、織り込み済みともいえる深刻な人員不足の実態を報告。そして、介護員のフリーランス化というアウトソースの可能性も示唆した。
日常業務の標準化による効率運営(経営)と裁量制によるプラスαの優位性。そこに専門職としてのフリーランスを登用することは、こうした介護施設の現状を打破する一つのヒントになるのではないかと感じた。まさにファリティマネジメントであろう。
*このリポートは、ケアマネのMさんが休暇を利用して短期スポットで働いた介護施設の体験談を聞き、記事化しました。 (第一部終わり)
*このリポートは、ケアマネのMさんが休暇を利用して短期スポットで働いた介護施設の体験談を聞き、記事化しました。 (第一部終わり)